以前から、IT人材のスキル標準に関わっている。ITSS、UISSの時代から考えると、もう17年位。最近は仕事柄、IT人材育成からは離れていたので、昨日開催されたSSUGのイベント*1で10年ぶりの近況伺いが出来た。
情報システムに取り組んでいるヒトからすれば、ITSSとか、UISSなどはご存知かもしれない。ITSSはSIerのSEのスキルとして標準化したもの、その後、ユーザ企業のIT部門の発注力も大事だぞ、という話でUISS、組み込み系ソフトの場合は特別なスキルということでETSSがまとめられた。その後、散在している複数のスタンダードを取りまとめたiCDとなったのくらいの記憶だった。
今回のテーマは、いま話題になっているDX人材に関するDSS(デジタルスキル標準)である。この標準については、IPAのホームページに掲載されている。*2
DSSは、DXにかかるすべてのヒトのスキルを規定したDSS-L(リテラシー)と、DXの推進者のスキルを規定したDSS-P(プロデューサかな?)を定義したもの。すべてのスキルを具備している神様みたいなヒトがいれば便利だが、そんなヒトは一朝一夕には出来ないし、IT部門の若手がキャリア形成するためのスキルマップとして、どの職種にになろうかな(PMとか)、どのレベルになろうかな(Lv4で社内一人前のリーダ、Lv7が世界・業界を牽引するヒトのレベル)である。
で、いずれの時代のスキル標準はここまではわかりやすいが、悩むのは具体的な活用方法である。ここでSEと組織の利害が相反してくる。
SE・・・高いスキルを身に着け、業務遂行力が高まれば待遇も良くなるだろうし、機会があれば他の会社でも活躍できるかもしれない。だからスキルが可視化されるのはいいな。
組織・・・
① 組織の仕事を棚卸しして、業務ごとに不足する職種があれば、計画的に育成や(外注により)補充して、組織としての出力を高めていこう。(漠然とDX人材が不足している、というよりは具体的な話になる)
② 社内での評価制度と組み合わせれば(つまり、高い処遇になるために一定のスキルが有ることを条件にすれば)、社員が自発的にスキルアップする動機づけになるかもしれない。
この辺で、自己を高めたい社員と、組織に社員を引き止めたい組織で、目標感が少し変わってくる。
で、その後に出てきたのがこの4象限。DSSの中で複数の職種を定義し、分担してDXを進めていくという。この辺で理解が混乱しだした。
- 4象限に分けるということは、上下左右のそれぞれはある程度方向性が分かれているとか、独立している物が良い。別職種が喧嘩しながらDXを推進出来るようにしないといけないなぁ・・・
- 上半分は大きくは業務理解と、経営観点での目線が必要だよなぁ。あまりITスキルにとらわれるというよりは、人間工学とか直感的に使えるUIを作れないとなぁ
- → この4象限だと、それぞれの象限のヒトが喧嘩してしまうのではないか
10年ぶりぐらいに近況を聞いて全部が腹落ちするというのは難しいかもしれない。ここまでの問題意識を喚起していただいたこのイベントの開催に感謝しつつ、この辺は、今度一度WGに参加させていただいて、十分に理解を深めたいと思う。
※ 以前、UISSをまとめていた際に、自信満々に活用事例を紹介させていただいたときに、各社のIT部門長の反応が非常に冷淡だったのを思い出した。その際に言われたのが、
「人材育成は、いくら投資したらどのくらいのリターンが来るか、投資対効果が判断できないから、意思決定しにくいんだよ」・・・と。
似たようなことは、セキュリティ対策でも言われることがある。このへんは永遠の課題になるのか、それとも大事故のときに罰金のように投資するのが良いのだろうか・・