イノベーション人材が不足している。イノベーションを推進するために、イノベーションを起こす人の資格制度を作ろうとしているところもある。
イノベーションと、イノベーションが難しいと言われている本質って、何なのでしょう。
現状に課題を抱えている。その課題解決が個々人の解決では済まないから、イノベーションという改革を断行しようとしていると考えてみたら、どうだろうか。
イノベーションの取り組みの成果の方向性が必ず正しいというエビデンスがあることも多くはない。最初は取るに足らないことがイノベーションのきっかけとも言われる。
イノベーション企業と言われている、某自販機メーカが、某建機メーカが、最初は取るに足らないことからイノベーションに取り組んでいた。自販機からどんな情報が取れるだろうか、建機の位置情報や稼働情報を何かに使えないだろうかという軽い仮説からスタートしている。
いろんな仮説を立て、多分、100の仮説のうち、90以上が不採用となり、ちょっとやってみようかというものが、1,2あって、その正しいイノベーションが現状に根付けばめっけもの。
他方で、組織や業務を直そうとすると、「このイノベーションは正しいのか。必ず儲かると言えるのか、業務継続性が担保されていると言えるのか」とアンチテーゼを出してくる人も多い。
実はアンチテーゼを出してくれる人の存在も大事で、イノベーションを推進する人に後押しをすること、またイノベーションを言い出した人だけがアンチテーゼを整理する仕事全部を押し付けなければいい。
イノベーションのネタを考える人は沢山いる。結局、イノベーションに乗っかる経営者、管理者が、持てるリソースや意思決定を、イノベーションに向けて舵を切る覚悟がある人が少ないために、イノベーションが進まない場合も多い。
アンチテーゼの登場は単なる心配だけではなく、組織的文化の根強い問題に依拠することもある。
某官公庁系の組織でイノベーションを言い出したときの話。相手の方から、以下のように言われたことがある。
「あなたは、これから法律違反をしようとされているのですね」
どういうことかと聞いてみると、「官公庁系の権限は強大であり、だからこそ法律で制限が決められて、法律に遵守して動くことで適正にサービスが提供される。だから、法律を改正せずにイノベーションを起こそうとする人は、すべからく法律違反者である」ということ。
その話を聞いたときはめちゃ腹がたった。反対勢力とはこういうものか、とも思った。ところが、法律を使って業務守ることは、官公庁組織にとっては仕組みであり、文化なのだ。仕組みを理解せず、または仕組みを担保することなしにイノベーションを論じれば、それは単なる無謀な輩になってしまう。
これはわかりやすい例の1つだが、文化、思想に根ざしたアンチテーゼの多くは悪気がなく、だからこそ変えることに非常に難しい。
イノベーションを難しくしているのは、アンチテーゼを出している人ではなく、イノベーションに無関係を装って、だんまりを決め込んでいる人たちなのかもしれない。