保守開発生産性の分析で、論文を書く機会があった。
保守開発生産性って言葉は耳馴染みないと思います。私が関わった200以上の情報システムでは、各システムが相互に連携してビジネスを提供していました。
企業の事業の変化を情報システムの上に実装するために追加改修のために開発するのが保守開発といっています。端的に言えば、200ある情報システムの増減する機会(すなわち、新規に情報システムをイチから作れる機会)はそれほどなく、その上の機能要件・非機能要件を実装するための改修を行うことを保守開発といい、その改修にかかる費用見積もりを、(情報システムの)保守開発生産性と呼んでいました。
たかが保守開発とは言っても、各四半期で数十億単位の投資が必要になり、その保守開発費の低減と効率的な運用は大きな組織命題でした。いろんなWEB記事で、発注者の発注力が問われることがありますが、発注力が低ければ生産性は落ちるし、ある程度見積もり根拠になる部分を明確にすれば、SIerも安全係数を低くすることで、相対的な見積もり単価は下がり、生産性の数値としては高まることになります。
(そういう意味では、情報システムを作るSIerにとっては、協力をすればするほど値切られるんだから、モチベーションが上がりにくい仕事にご協力いただいて、感謝です)
で、そんな取り組み成果をまとめて、外部発表や、論文にさせていただく機会がありました。
企業情報システムにおける発注者の育成に向けて:学会への期待_情報処理学会 第76回全国大会
情報システム保守開発におけるFPと基準生産性の活用 (情報処理学会): 2008-12-02|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
保守開発生産性でわかったことを簡単に説明します。
情報システムは、大きく以下の3つに分けて管理しています。
基幹系システム・・・顧客情報等、事業や業務に合わせて情報管理するシステム
フロント系システム・・・利用者や社内ユーザに、インターフェース画面を提供するためのシステム
情報系システム・・・基幹系のレプリカ情報を基に、分析するためのシステム
3つに分けたというよりは、見積もりの価格の特性上、3つに分けて管理することが見積もりの説明が付いたということです。
ベンダーからの見積もりを。総開発量、改修機能量、母体規模量、見積もり金額などの見積もりを、数量化分析とかいくつかの分析ロジックにかけ、見積もりと金額の相関性を見てみました。R2が≧0.7以上なら有意でだいうことで、調べてみました
機能量などはファンクションポイント(FP)で測り、担当者によるブレが出ないように、ファンクションポイントは期間限定で雇ったSEが専門で、どの見積もりもFPを見積もる
論文はその結果をまとめたものですが、副次的効果として期間限定で入っていただいた方の能力が高まり、その後正社員でのポジションになられていく。これも嬉しかった
人のシステムの資料だけど、客観的に見ていると、それだけで経験値になるんだと思う
で、1システムだけ、相関係数R2=1ってのがでて、そのときはそのベンダーさんに、「ひょっとして、こうやって見積金額出してるんですか?」と聞いてみたところ。
「そうですよ。なんでわかったんですか?」ってなときが、至福のひととき。